発達障がいとは?

発達障がいの特性

一口に「子ども」と言っても、いろいろな子どもがいます。
性格も特徴もそれぞれ異なり、この違いは「個性」と呼ばれます。発達障がいの子どもは、この個性がひときわ大きいのです。
発達障がいの特性は決して特別なものではなく、誰もが持ち合わせているものばかりです。ただ、その特性の度合いが強かったり、いくつもが重なり合ったりしているために簡単には分かり合えない部分もあり、その子の性格や行動を理解するにはより多くの工夫と支援が必要になります。

発達障がいの特性を持つ子どもは、他の子どもたちと比べてできないことばかり注目されますが、同じようにできることもたくさんあります。他の子どもたちよりもよくできる力もあります。他の人と比べて劣っているということではなく、感じ方や受け止め方が個性的であるために、誰にでもある得手不得手なことの差がはっきりしてしまうのです。

 

発達障がいという言葉には「障がい」という文字が入っているため、その重い響きに困惑や落胆される親御さんもいるでしょう。しかし、発達障がいという言葉には、子どもの生きづらさをやわらげたり、子どもと支援を結びつけたりするための一つの役割があります。
子どもが頑張っているのに成果が上がらないことはその子の努力不足ではなく、特性によるものであることを周りも本人も気づくこと、どうしたらその子の能力が伸びるのか、生きづらさをやわらげるための環境や支援体制を整えていくことが大切です。

子ども本人も悩んでいます

発達障がいの特性のひとつでもある強いこだわりは、ほかの人には共感しにくい面があり、親であってもその対応にはとまどってしまうことがあります。また、誰かをたたいてしまったり、順番を待つことができずに割り込んでしまったりする行動から、「乱暴」「わがまま」と周囲から白い目で見られがちです。

しかし、この周囲を困らせてしまうような行動は、発達障がいをもつ子どもの脳が正しく働いている結果でもあります。一見すると問題児のようでも、これらは脳からの正しい命令による行動であり、決してふざけたり、わざとしていたりするわけではありません。こうしたふるまいや言動は、特性によるものであり、子どもからの声なき訴えなのです。

 

発達障がいの特性があっても、小さいころから周囲の理解があって育った子どもの中には、症状がでないまま人生を歩む人も多くいます。

一方、小さいころから誤解や理解されないまま育ち、否定され、叱られ続けたり、無理強いをさせられたりすると、「自分はダメな子」といった強い劣等感をもったまま成長し、ひきこもりなどの状況になってしまうこともあります。

発達障がいの特性は、周囲の理解が深まるほど目立ちにくくなります。特性が消えたり直ったりすることはありませんが、早期に正しく理解することで、子どもの生きづらさを緩和し、成長をうながすことができます。ただ、その子の行動や言動が発達障がいの特性であるという判断はとても難しいのです。

学校や社会では、多くの人が同じ行動をとったり、同じルールの中で生活をしたりしています。その中で大切になってくるのは、人とのコミュニケーションです。発達障がいの特性のある子どもは、その強い個性から周りと折り合いをつけることが難しく、コミュニケーションをとるのが苦手です。お互いがわかり合えないことで、孤立してしまう場合もあります。ひとりでいることが好きな子もいますが、集団になじめずに仕方なく一人でいる子もいるかもしれません。お互いが理解を深めること、歩み寄ることが大切になってきます。

発達障がいはわがままやしつけ不足ではありません

近年では発達障がいの研究が進んで、医学的に生まれつきの脳の機能障がいであることが広く知られるようになってきました。以前は「わがままな子」という誤解を受けたり、親もしつけ不足や子どもへの愛情の注ぎ方が間違っているのではないかと自分を責めたりしていましたが、理解が深まってきたことで、誤解によって追い詰められてしまうことも少なくなってきています。
しかし、発達障がいの特性をもつ子どもの中には、いまだにわがままやしつけ不足と誤解されたまま、叱られたり注意されたりする子もいます。こうした行為は、子どものためを思うがゆえであることが多いのですが、結果的にはその子のことを否定してしまい、自尊心を傷つけてしまうことになります。
不登校やひきこもりなどの状況にある子どもたちの中には、これらの誤解によって自尊心が傷つき、二次障がいを引き起こしてしまっている場合も少なくありません。

子どもはほめられることで次の自信につながり、成長していきます。望ましい行動を教え、その子ができたときには大いにほめてあげてください。

大人になってから障がいに気づくこともあります

幼いころから発達障がいに配慮した支援を受けた人の中には、得意なことや能力を伸ばして、様々な道で才能を発揮する人がいます。
一方で、知的な遅れがなく、周囲や本人も障がいに気が付かないまま成長し、社会に出てさまざまな問題に直面することで自分自身に発達障がいの特性があるのではないかと悩む人もいます。
自分の特性を理解することで、前向きに社会とかかわれるようになる人もいますが、ひきこもりの状態になってしまう人もいます。特性に合う職種についたり、生活環境をととのえたりするためにも、早い時期からの周囲の理解と支援はとても大切です。

二次障がいを予防するために

二次障がいとは、発達障がい(一次障がい)をもつ子が多くの失敗に直面したり挫折に悩んだりしたときに、周囲の無理解により責められ続け、自分を肯定できなくなった結果、引きこもりやうつなどの状態になってしまうことをいいます。
特性が見過ごされてしまった場合、小さいころから無理解や不適切な養育下に置かれるリスクが増え、二次障がいがおこりやすくなります。
特に学校では、同じルールを守れなかったり、周りとの折り合いがうまくつけられなかったりすることで、からかいやいじめの標的になることがあります。また、勉強についていけなくなることで自尊心が傷ついてしまうこともあります。

二次障がいを予防するには、本人の状況や特性などをよく知る理解者が必要になります。そして、この理解者が生活環境の調整などを行い、その子の意欲を何か一つでも引き出したり、自信につながったりするようなことをみつけてあげることが大事になります。

主な発達障がい

さまざまな発達障がい

自閉スペクトラム症

社会性やコミュニケーションにおいて、苦手や困難を抱えており、自分の関心ごとややりたいことを最優先させたいという特徴があります。

スペクトラムとは「連続したもの」という意味です。自閉症の特性にも個人によって差があり、それらは異なっているようにみえるけれど、基本的なところでは連続しているという考え方からスペクトラムと総称されます。

 

【自閉スペクトラム症の主な特徴

[1]社会的にコミュニケーションや対人関係に障がい

  • 視線が合いにくい
  • 人とのかかわりにおいて、相手の感情や表情を読み取ることが苦手
  • ひとりでいることを好む
  • 話し言葉が遅れている
  • 会話がかみあわない

[2] 限定された反復的な様式の行動、興味、または活動

  • 同じ行動、言動を繰り返す
  • 特定の物や事柄に強い興味を持ち、こだわる
  • 感覚が過敏・鈍感など偏りがある

このような特徴は、2歳頃までに多く見られるようになるといわれていますが、個人差があり、年齢によって変化することもあります。

ADHD(注意欠如・多動性障がい)

ADHDは、Attention Deficit/Hyperactivity Disorderの頭文字をとったもので、日本語では、注意欠如・多動性障がいといわれます。

 

【ADHDの主な特徴】

[1]不注意

  • 忘れ物が多い
  • 物をなくしやすい
  • すぐに気がそれて一つのことに集中できない

[2]多動性

  • じっとしているのが苦手
  • 話し出すと止まらない
  • 静かにしていれない

[3]衝動性

  • 思ったことをすぐ行動にしてしまう
  • 優先順位がつけられない
  • 順番を待つことが難しい

ただ、この3つの症状がすべてあらわれるわけではなく、どれかが極端にあらわれたり、いくつかの症状が同じくらいの割合で出てきたりします。

LD(学習障がい)

LDには教育的な立場でのLD(Learning Disabilities)と医学的な立場でのLD(Learning Disorders)の2つの考え方があります。

知的能力に遅れはありませんが、聞く、話す、書く、計算する、推論する能力のうち、特定の能力の習得と使用に困難を示します。

 

【LDの主な特徴】

[1]読むこと・書くことが苦手

  • 文章の内容、まとまりを理解できず、うまく読むことができない
  • 似た文字を間違える、鏡文字になる

[2]聞き取ること・話すことが苦手

  • 注意がそれやすく、聞き間違いや聞き逃しが多い
  • 話の道筋をうまく構成できない

[3]計算や推論が苦手

  • 簡単な数字や記号が理解できない
  • 図形がイメージできない
LDの特性は、本格的な学習に入る機会によって明らかになるために、小学生に入ってから目立つようになります。特定の分野でのみ困難があるため、「勉強不足」「努力すればできる」と誤解されることが多くあります。

いくつかの発達障がいが重なり合うこともあります

自閉スペクトラム症、ADHD、LDなどの発達障がいは特性の重なる部分も多く、医師であっても診断に迷うことがあります。両方の障がいの特性を持ち合わせている場合も、違う障がいの同じ特性をさしていることもあり、障がいを区別するのは困難です。

現在は、発達障がいを区別するのではなく、連続しているととらえる「発達障がいスペクトラム」という考え方へ発展してきています。スペクトラムという考え方は、障がい名へのこだわりを解放してくれる視点です。これにより、特性を注意深く観察することができ、細かな配慮や支援につなげることができます。

特性のあらわれ方は様々です

発達障がいの特性は、同じ障がい名であっても同じ特性があらわれるとは限りません。特性の強さも人によって異なります。

また、年齢を重ねていくことで特性が目立たなくなることもあります。これは直ったり消えたりしたのではなく、療育などを通じて社会経験をたくさん積み、その場にあった振る舞いができるようになることで困っていた症状が目立たなくなったといえます。

このように生活や社会のルールをわかりやすく覚えられるように工夫することで、その子の適応力となり、生きづらさの軽減につながるのです。

気になる行動

こんな様子が気になったら

発達障がいは、確定診断が難しいと言われています。以下にご紹介するポイントに当てはまったからといって、「発達障がいである」と診断できるものではありません。
しかし、子どもの行動からその子が抱える困難を理解し、向き合うことが大切になってきます。

こだわり

行事などの際におともだちと一緒に行動できない
こだわりや特定のものへの強い執着がある
かんしゃくやパニックを起こすことが多い

ことば

冗談が通じない
物の用途が言えない

多動・衝動性

落ち着きがない
過剰にしゃべる
親から離れてしまう、迷子になっても平気

社会性

ひとり遊びが多い、友だちの輪に入れない/入らない
集団行動や共同作業が難しい
変化についていけない
ルールを守れない/順番を待つことが苦手

協調運動

不器用さがみられる

感覚過敏

偏食がひどい
光や音、感覚が敏感/手をつなぐ、抱きしめられるのを嫌がる

コミュニケーション

空気が読めない/人の表情が読めない
言葉のやりとりが成立しにくい
あいまいな表現が苦手

不注意

忘れっぽい/細かいところに注意がいかない
ひとつのことに集中しにくい

表現・行動

泣かない/笑わない
気持ちがうまく切り替えることができにくい

発達障がいかも…と感じたら

周りが早く気づいて支援していくことが大切です

上記の気になる行動の中から「うちの子にもこんなところがある」と思われた方がいるでしょう。

これらの行動をするからといってかならずしも発達障がいであるということではありませんが、日々の暮らしの中でお子さんの言動に悩んでいたり、子ども本人も生きづらさを感じていたりするのであれば、子どもが生活をしやすいような環境を整えてみてください。

「何か違う」「何か変」と感じたり困ったりすることがあるようならば、一人で悩まずに専門家に相談してください。子どもは十分に自分の思いを伝えることができません。

どのような環境を整えるとその子が生きやすくなるのか、ということを知るためにも周囲がその子の特性に気づき、前向きに支援していくことが大切です。

どこに相談すればいいの?

お一人で悩まず相談してみましょう

子育てやわが子のことで不安を感じたら、お一人で悩まずに以下の専門機関に相談してみてください。

専門の医療機関

  • 児童精神科
  • 小児精神科
  • 子どもの発達に詳しいクリニックなど

地域で相談できるところ

  • かかりつけの小児科
  • 保健所や保健センター
  • 子育て支援センター
  • 自治体の福祉課
  • 保育園・幼稚園・小学校など

もし疑いがあると診断されたら

発達障がいの特性を治療するような方法はありませんが、特性を理解し、症状や状態に適した接し方や環境を整える(療育を受ける)ことで、症状を緩和することができます。

療育とは、発達障がいなどの障がいをもつ子どもが社会的に自立できるよう、医療や教育、福祉などを通じて支援を行うことです。

生活への不自由をなくすよう専門的な教育支援プログラムにのっとり、その子の成長のペースにあった適切なトレーニングをすることで、生きづらさをやわらげていくことができます。

 

レインボーキッズメソッド(丹原) レインボーキッズメソッド2(西条)

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[参考文献]
『イラスト図解 発達障害の子どもの心と行動がわかる本』田中康雄監修(西東社)